平成31年2月19日に最高裁判所で離婚の慰謝料が認められないという報道を見た福岡探偵事務所の探偵です。え？じゃあ浮気をしても今後慰謝料請求されなくなるの？と思った人は大きな間違いです。不貞の慰謝料と離婚の慰謝料は別物と考えてくださいね。その判決を（参照：裁判年月日平成31年2月19日）読んでみましたが、今後どうなっていくのか？探偵としては非常に興味があるところです。
目次
■離婚の慰謝料を請求した今回のケース
・夫が妻の浮気相手に請求
よくある浮気のケースではありますが、軽く状況を説明すると妻が勤務先の男と不貞を働き夫がそれを知ったというケースです。浮気がバレてしまったからなのか、たまたまその時期に別れたのかは分かりませんが浮気相手とは浮気の関係を切り、夫と同居を続けたと。しかし、子どもが成長し手がかからないようになった時に妻は夫と別居したようです。そこから夫が妻を相手に調停をし離婚が成立したというのが一連の流れです。
本件は，被上告人が，上告人に対し，上告人が被上告人の妻であったＡと不貞行為に及び，これにより離婚をやむなくされ精神的苦痛を被ったと主張して，不法行為に基づき，離婚に伴う慰謝料等の支払を求める事案である。
要は浮気相手に対し浮気が原因で離婚したんだから、離婚の慰謝料を払えという請求をしたということですね。
・浮気をされ離婚する精神的苦痛は？
夫婦の一方は，他方に対し，その有責行為により離婚をやむなくされ精神的苦痛を被ったことを理由としてその損害の賠償を求めることができるところ，本件は，夫婦間ではなく，夫婦の一方が，他方と不貞関係にあった第三者に対して，離婚に伴う慰謝料を請求するものである。
これも上に書いたものとほぼ似ていますが、浮気をされて離婚をする場合は配偶者には損害賠償を請求できるが、今回のケースは浮気相手に請求するものということです。
夫婦が離婚するに至るまでの経緯は当該夫婦の諸事情に応じて一様ではないが，協議上の離婚と裁判上の離婚のいずれであっても，離婚による婚姻の解消は，本来，当該夫婦の間で決められるべき事柄である。
したがって，夫婦の一方と不貞行為に及んだ第三者は，これにより当該夫婦の婚姻関係が破綻して離婚するに至ったとしても，当該夫婦の他方に対し，不貞行為を理由とする不法行為責任を負うべき場合があることはともかくとして，直ちに，当該夫婦を離婚させたことを理由とする不法行為責任を負うことはないと解される。
浮気をしたことについての慰謝料は支払うことはあるが、浮気が原因で離婚したとしても離婚するかどうかは夫婦で決める事であり原則はその責任まで負わなくてよいと書いてあります。
・離婚の慰謝料は支払ってもらえる場合もある
第三者がそのことを理由とする不法行為責任を負うのは，当該第三者が，単に夫婦の一方との間で不貞行為に及ぶにとどまらず，当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情があるときに限られるというべきである。
上告人は，被上告人の妻であったＡと不貞行為に及んだものであるが，これが発覚した頃にＡとの不貞関係は解消されており，離婚成立までの間に上記特段の事情があったことはうかがわれない。
単に不貞行為だけではなく、離婚させようとする意図があれば離婚の慰謝料も請求できるようですね。私の個人的な考えでは既婚者と不貞行為を働いている時点で離婚させることを意図して不当に干渉しているような気がしますが、今回は発覚した頃に浮気の関係が解消されたこともあり離婚成立までの間に特段の事情があったと認められなかったようです。
■探偵として証拠の重要性を再認識
・離婚させる意図の証拠
私は今回のこの判決で証拠の重要性を改めて感じさせられました。今回の裁判のケースは妻か浮気相手かが本気ではなく遊びのつもりだったのではないかと思います。だからバレたら別れたのではないかと。実際に探偵として相談を聞いたり調査に入ると、配偶者とその浮気相手が本気な場合、妻や夫にバレているのにも係らず浮気を続けるということはあります。そういった部分の証拠も含め集めていく事により離婚させる意図があるという事を立証できるのかもしれません。これからの判決で離婚させる意図の証拠とは具体的にどのようなものなのかは分かっていく事になるでしょう。
・浮気の慰謝料請求額はどうなる？
今までは不貞により離婚するかしないかで慰謝料の額に影響がありましたが、離婚するかどうかより離婚させる意図があって離婚に至ったかどうかが重要になりそうですね。この判決が今後、示談でもどの程度影響があるかというのは弁護士はじめ、色々な所から情報収集していかなければならないと思っています。案外、何も変わらないという事もあるかもしれません。
■まとめ
テレビのニュースになっていたくらいですから、世間の関心もあったと思います。報道の仕方から浮気されても慰謝料請求できないの？と思ってしまいそうな流し方でしたが、そうではないということです。あくまでも浮気の慰謝料ではなく浮気が原因で離婚したという慰謝料ですので。今後は、「慰謝料の請求額」と「離婚させる意図」が具体的に何か？を注目して情報を集めていきたいと思います。
